
法人の決算の際、今年は減価償却をしないとかするとか、そんな話をすることがあります。これは一体どういうことなのでしょうか。
減価償却というのは、一時的に多額の設備投資などがある場合、その投資効果が及ぶ年度にわたり、費用を配分する会計処理のことです。
ということは、設備投資の効果が及んでいる限り(例えば、去年買ったクルマを今年も使っている、とか)、減価償却は必ずしなければならないはずです。
つまり、本来的には減価償却をするか否かに選択の余地はないわけで、減価償却をしないということの意味がますますわからなくなります。
ここで、「会計」ということの意味を考えなくてはなりません。
そもそも会計を行う意義は、民間企業、とくに中小法人において大きく二つに分けることができます。
それは、「企業会計」と「税法会計」と言われるものです。「企業会計」は、企業の成績を正しく表すために行われる会計処理なのに対し、「税法会計」は税金の計算のために行われる会計処理を指します。「費用・収益(企業会計)」、「損金・益金(税法会計)」といった異なる呼称があるのはそのためです。そして、費用と損金、収益と益金についてそれぞれ対応関係にあるものの、同じ内容ではありません。その違いがポイントとなるのです。
「減価償却をしない」という処理の根拠は、税法会計の中で説明することができます。法人税法では、減価償却をするか否かが任意であると定められています。つまり、法人税の計算上、減価償却を損金としないことができるのです。
本来、企業は企業会計に基づいて成績を正しく表すべく、減価償却をしないような会計処理は認められません(この任意償却のような税法会計と企業会計の差異は、法人税申告書の別表上でのみ行うことになります)。しかしながら、実務上は簡便的に企業会計を税法会計に合わせて税金計算をしやすくしているという事情があるわけです。
本稿においては、比較的わかりやすい減価償却を例に出しましたが、他にも多くの会計処理で、税法会計に合わせられているものがあります。このような簡便的な税法会計は、会計事務所の怠慢のように思われるかもしれませんが、必ずしもそのようなものではなく、お客様が混乱せず税金を予測するための必然的な処理でもあるわけです。
最近では、租税回避防止のため、税法はますます複雑になり、企業会計との乖離が著しくなってきています。したがって、本稿のような「税法会計的企業会計」を続ければ、今後ますます、企業の正しい営業成績がわからなくなることになります。
もちろん、正しい企業会計を実践すれば、その分煩雑にもなりますし、税金計算の基礎となる所得は予測しづらい財務諸表になるという考え方もあります。
中小企業庁などが、正しい会計を推進したり、税効果会計が企業会計の標準としたりするなかで、中小企業がどのような会計処理を進めていくか、大変悩ましいところだと思います。
※法人では減価償却の会計処理に税法と企業会計で乖離が表れますが、個人の事業所得計算については、減価償却するか否かの選択が認められていないため、そのような乖離は生じ得ないことになります。
※中小企業庁が「中小企業の会計に関する研究会」の報告書に基づいた会計を推進しています。⇒くわしくは中小企業庁ホームページの「中小企業の会計について」をご覧ください。
(職員 K)
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